接地抵抗値(アース)の根拠と現場で役立つ実務知識

法令関係

電気管理の現場で「接地(アース)」は、もっとも基本的でありながら、もっとも奥が深いテーマの一つです。

「とりあえずアースを引いておけば安心」と思われがちですが、その一つひとつには厳格な法的根拠と、人命を守るためのロジックが詰まっています。

今回は、実務者が避けて通れない接地の目的や種類、そして現場でよく聞かれる「接地抵抗の決まり方」について深掘りしていきます。


なぜ接地するのか?「安全」と「機能」の二大目的

そもそも、なぜ電気機器の金属製外箱などを大地とつなぐ必要があるのでしょうか。その理由は大きく分けて2つあります。

感電事故の防止

一つは、絶縁が劣化した際に発生する漏電(地絡)から人を守るためです。 もし接地がなければ、漏電した機器のケースに触れた人の体を通して電流が大地へ流れ(感電)、最悪の場合は死に至ります。あらかじめ電気の通り道(接地線)を作っておくことで、人体へ流れる電流を抑えるのが保安用接地の役割です。

もう一つは、電路の電位を安定させ、事故時に漏電遮断器(ELB)地絡継電器(GR)を確実に動作させるためです。B種接地工事を施すことで、変圧器の内部故障(混触)時に低圧側の電位上昇を抑える役割もあります。

洗濯機などの家電からキュービクル内の高圧機器まで、あらゆる場所にアースがあります。接地極は「大地へ接続する電線の端子」の役目を担っています。漏電時に「あらかじめ電流が流れる道を作っておく」という意識を持つことが、事故防止の第一歩です 。


接地抵抗はどうやって決まっている?法的根拠と計算式

接地抵抗値は、単なる勘で決まっているわけではありません。「電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)」によって、その種類と上限値が明確に定められています。

接地工事の種類と判定基準(電技解釈 第17条)

実務で扱う主要な接地の基準を以下の表にまとめました。

接地工事の種類対象接地抵抗値(原則)適用条文
A種接地工事高圧・特高機器の外箱、避雷器など10Ω以下電技解釈 第17条
B種接地工事変圧器の低圧側中性点計算式による(後述)電技解釈 第17条
C種接地工事300V超の低圧機器外箱10Ω以下(※)電技解釈 第17条
D種接地工事300V以下の低圧機器外箱100Ω以下(※)電技解釈 第17条

(※)漏電遮断器を施設し、0.5秒以内に自動的に遮断する場合は500Ω以下まで緩和可能。

B種接地抵抗値(第17条)の計算根拠

B種接地は、高圧と低圧が混触した際の低圧側電位上昇を「150V(または状況により300V、600V)」以下に抑えるように計算されます。

解説:B種接地抵抗の計算式

R [Ω]= 150[V] / Ig[A]

ここで Igは、高圧側の 1 線地絡電流(アンペア)です。

※1秒を超え2秒以内に自動遮断する場合は 300/Ig、1秒以内に遮断する場合は 600/Ig となります。


共用接地(等電位ボンディング)の考え方

最近のビルや工場では、個別に接地を取るのではなく、建物の構造体(鉄筋・鉄骨)を利用した接地が一般的です。

等電位ボンディングのメリットと注意点

複数の接地極を連結することで全体の接地抵抗を低く抑えられ、雷サージなどによる機器間の電位差(ステップ電圧)を解消できるメリットがあります。

引用:高圧受電設備規程(JEAC 8011) 「等電位ボンディングとは、直接導体部分間を接続して電位差をなくすもので、建物内のすべての金属部分(鉄筋、鉄骨等の金属製構造体など)が対象になる」

現場で起こりやすいミス

共用接地にする場合、弱電設備(通信回線)などにノイズが回り込むトラブルが発生することがあります。これを防ぐために、サージ保護デバイス(SPD)を併用するなどの対策が実務では求められます 。


まとめ:接地は電気保安の命綱

接地は目に見えない「大地の配線」です。

法令で定められた抵抗値を維持することはもちろん、なぜその値が必要なのかという背景(電技解釈や内線規程の根拠)を理解しておくことで、現場での突発的な不具合にも自信を持って対応できるようになります。

特に、B種接地の計算や、近年主流の等電位ボンディングの考え方は、設計・施工・保守のあらゆるフェーズで重要です。


参考文献・資料

  • 電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)
  • 高圧受電設備規程(JEAC 8011)
  • 内線規程(JEAC 8001)

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